このエピソードからお読みの方は、 『篤があつしに変わるまで 0 プロローグ』 からお読みください。
あ
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あ
「ひどいこと言うね~。それ、なんて出版社?」
「まぁ、本なんてそう簡単に出せるもんじゃないよ。『頑張った&頑張れ会』を開いてあげるから、本業のソフト開発でまた頑張んなよ!」
ボクの愚痴を聞いた『友人』の反応である。
その一方で、
「馬鹿だね~。お前、始めから騙されてたんだよ」
「お前、本気で自分が本なんて出せると思っていたわけ?」
こんな反応をする『知人』もいた。
ただでさえ高ぶっている神経を逆なでするようなコメントだ。
また、
「駄目だよ、諦めちゃ! まだ、全部の出版社を回ったわけじゃないんでしょう? 諦めるのは、日本中の出版社を回ってからにしなよ」
「あの原稿『いけてる』よ。チャンスはまだ途絶えてないよ」
と、励ましてくれた『親友』も何人かいた。
「親友」たちは、様々な偉人の下積み時代の話をしてくれたり、色々な偉人の名言を持ち出してくれたり……。
ちなみに、ボクがさまざまな名言、もとい、迷言を生み出すのが習慣化し、結果として『エブリ リトル シング』という20万部の小説を書けたのは、明白にこの頃の体験にもとづいている。
やはり、人生に無駄な経験はないのだなと思う。
それはさておき、当時は2週間まったく上がらないほどにボクの腰は重かった。仕事もせずに、ロールプレーイングゲームに興ずる毎日。
ただ、実際のところはただの惰性で、心底ゲームを楽しんでいたわけではなかった。すると、絶妙なタイミングで「親友」たちがこんな怠惰なボクを励ましてくれる。
やがては、重かった腰も徐々に軽くなり、朝日の中で新鮮な空気を吸い込むたびに、再び原稿を売り込む気力が徐々に体内に注入され、そして充満していった。
<もう少しだけ頑張ってみるか……>
そして、悔し涙を流してから約1ヵ月後。
いよいよボクは、エーアイ出版に
『Excelマクロで作る販売管理』
と題した原稿を持ち込むことになる。
その2ヵ月後に、今度は「悔し涙」ではなく「嬉し涙」を流すことになるとも知らずに。